SPECIES APPROPRIATE DIET 種に適した食事とは
動物にはそれぞれの「生物としての種」に合った本来の自然な食事があります。何万年、何千年もかけて種が生存する環境の中で適応してきた過程で、体の機能を司るDNAはそんなに急激には変われません。近年100年足らずの急激な「食の工業化」は、人間にとっても、そして動物にとっても大変な時代だと言えます。祖先が何万年も自然の中で食べてきた、犬猫にとっての自然な「リアルフード」として、米国では野生食になるべく近い、動物性のタンパク源を中心とした「生食」(ローフード)を取り入れる獣医師や飼い主が増えてきました。生食をはじめ自然の食べ物には、動物の体が本来自然な形でいきいきと機能するのに必要な良質のタンパク質をはじめ、病気と闘うためにも貴重な微量栄養が詰まっていると考えられています。
犬猫はもともと自然の中で、獲物を狩って暮らしてきました。人間と生活を共にするようになったのは1万年前頃と推定されています。人間の残飯を分け合うことがあったにせよ、必要であれば自由に外に出て狩をすることで自ら必要な栄養を自分で調達する機会も近年までは普通にあったのです。例えば猫はつい近年まで自由にネズミを狩る機会がありましたし、犬も野山や家の近くで小動物を狩る機会がありました。完全に家の中で飼われるようになったのはごく最近のことです。さらに、大量生産・高度加工されたペットフードだけの食事になったのもごく最近(たった50年ほど前から)です。たとえば、犬は狼との共通の祖先から4万年ほど前に分科したと考えられていますので、現代のペットフード中心の食事に変わったのは、彼らにとってとんでもなく急激な食の変化だと想像できます。野生の獲物を狩って暮らしていた頃の、祖先の食事を再現した研究では、犬猫は獲物を丸ごと食べる肉食が中心で、犬は食事の7〜8割、猫は9割以上を動物性のタンパク源として摂取していたと推測されています。それに比べると、現在の一般的なペットフードの組成は、とうもろこし、小麦、大豆などの穀類(炭水化物)が主になっています。
また、犬猫の歯や消化器官を解剖学的に見た場合も、雑食動物である人間とは大きく異なることがわかります。猫は純粋な肉食動物、犬は人間と共に暮らしてきた長い時間をかけて炭水化物を消化する能力を若干身につけてきましたが、生物学的にはまだまだ肉食に近い動物です。
- 猫は完全肉食動物
- 犬は準肉食動物(雑食能力を身につけてきた肉食動物=肉食寄りの雑食動物)